Thursday, September 17, 2015

「報・連・相」のないアメリカで部下と仕事をする方法

日本では、部下は上司に対して、頻繁に報告し、連絡し、相談することが重要とされます。「報・連・相」たる造語が出来た位です。自分のやっている仕事の中で、上司が知りたいだろうと思うもの想像して、それらを絶妙のタイミングで報告にいく。それが、「気の効く部下」たるものです。
アメリカで、自分の部下に、これを期待すると大きな間違いを犯すことになります。
アメリカでは、自分の部下が、気を効かして、何かを報告してくるということは、まず無いと思った方が良いです。聞きたいことがあれば、上司が部下に報告を要求するのが常識です。日本人の感覚からすると、「何と気の効かない奴だ!」ということになるのですが。
たまに、アメリカ人の部下が「ちょっと相談したいことがあります。」と言って、私のオフィスに来ることがあります。そんな時に、「お、報告に来たな!」と喜んではいけません。彼らが自分から、相談に来るときは、たいていは、何か要求がある時です。しかも、昇進の要求、給与アップの要求、辞職の通知等余り良い知らせで無いことが殆どです。
アメリカ人があまり報告をしない理由は、主に3つあると思います。
第一に、アメリカ人は、要求されてもないのに、報告をしにいくのは、上司の時間を無駄にする悪い行為と捉えている様です。要求された時にだけ報告に行くのが気の効く行為と思っています。
第二に、「上司から任された仕事は、自分の力で遣り上げる。」ことを非常に重視する国民性から来ていると思います。すぐに報告に行って、上司の指示を仰ぐのは、自分の無能をさらけ出すようなものです。従って、あるプロジェクトを任されると、余程のことがない限り、プロジェクトが終わるまでは報告に来ません。
たまに、自分の力ではプロジェクトがハンドル出来なくなってしまうと、エスカレーションと称して報告があります。そんな時は、「何でもっと早く報告しなかったんだ!」と言いたくなります。


アメリカの強いリーダーは、細かい進捗チェックをしない?
報告をしない、3番目の理由は、上司の指示の仕方にあると思います。アメリカ人の上司は、指示を詳細かつ明快にします。「メキシコ向けの売上を今年度末までに$10Mせよ。そのために経費を$1M使ってよい。進捗状況を月に一回メールで報告せよ。」といった具合です。従って、月一回のメール以外には報告する必要がありません。
ところが、日本人の上司の指示は漠然としています。「メキシコ向け売上を増やしたいので、対応して欲しい。」位の漠然とした指示しておいて、売上目標額、達成時期等は、プロジェクトの進捗状況を見ながら、柔軟に決めていきます。この日本式のやり方は、部下が頻繁に報告に来ないと成り立ちません。
従って、アメリカでは、部下が報告に来ないことを前提にして、仕事の仕方を考える必要があります。
一つのやり方は、頻繁に、例えば1日一回、部下の所へ出向いて、状況報告を求めることです。ただ、このやり方はあまりお勧め出来ません。そうした時間を毎日取るのは、現実には難しいですし、あまり頻繁に報告を要求すると、部下から弱いリーダーと思われてしまいます。アメリカ人は、強いリーダーは、最初に明確な指示をしたら、部下に仕事を任せて、細かい進捗チェックはしないものと思っています。
お勧めのやり方は、週に一度、時間を決めて、直属の部下を集めて報告会を行うことです。こうしたやり方は、効率性を重んじるアメリカ人に合っていると思います。

もう一つのお勧めは、アメリカ人のやり方を真似て、指示を明確にすることです。特に報告のやり方を明確にしておくことが特に重要です。アメリカ人は、指示をされると必ずそれに従ってくれます。

(この文章は、南カリフォルニアの情報誌ライトハウスに掲載された記事を修正・加筆したものです。)

Wednesday, August 12, 2015

アメリカ社内の規則の緩さは、アメリカ社会の活力の源!?

日本の会社は社内規則でがんじがらめです。それはそれで窮屈ですが、個人を尊重するアメリカでは、規則はあるものの、個人の裁量を大幅に認めています。日本人にとっては、慣れるまでは、ちょっと居心地が悪いです。
そもそも、私の会社には始業時間とか終業時間といった概念がありません。
一日8時間働けばよく、出社、帰社の時間は個人の裁量に委ねられています。朝6時に出社して、午後3時まで働き、夕方の子供のピックアップに間に合わせる従業員とか、逆に朝10時にきて、午後7時まで働き、朝、子供を学校に落としてから出社する親とが様々です。また、上司の了解さえあれば、事務所に来ないで、自宅で働いても良いので、通勤時間の長い従業員は、週に3日だけ事務所に来て、2日は自宅勤務だったりします。
日本にいた時には、全従業員が8時半に出社し、朝礼をしてから仕事を始めていたので、こういった環境に入ると規律が緩んでいる感じがします。また、自分の部下が、遅く出社したり、早く帰ったり、自宅で勤務したりすることが、良くあります。話したい時にいなかったりすると、日本的な感覚が抜けきらないうちは、イライラすることもありました。
また、アメリカの祝日は、殆どの場合が月曜日で3連休になるのですが、私の会社では、3連休の前日の金曜日は、半ドンというのが、暗黙の了解になっています。
日本では、3連休の前は、翌日から休んでも業務に支障が無いように、遅くまで残業して、やっとの思いで3連休に入るのが当たり前でした。いまでも3連休の前の金曜日の午後は、気がつくと、事務所にいるのは日本人駐在員だけだったりということもあります。

個人の裁量に委ねられることで、得られるメリットは多い。
出張手続も随分と簡単です。
日本にいた頃は、国内出張でも、詳細を指定のフォーマットに漏れなく記入し、上司に説明に行って決済をもらっていました。海外出張に至っては、役員会に諮る必要がありました。
アメリカの私の会社では、一応、出張申請用のフォーマットがありますが、殆どの人が使っておらず、たまに使っている場合でも空欄が目立ちます。最初の内は、何時の飛行機に乗るのかとか、どこのホテルに泊まるのかとか、誰と会うのかとか、色々と質問していましたが、部下からはマイクロマネジメントと、疎まれ、次第に、そういった質問もしなくなりました。今では、いつからいつまでどこに行くのか位が分かれば、部下を信頼して"Approved"という返事を出しています。
勤務時間がフレキシブルなことにより、女性が育児をしながら働くことが出来たり、男性が育児や家事に参加出来たりと、ワークライフバランスが維持できます。生涯教育やボランティアにも参加できます。勤務時間への柔軟な対応が、アメリカの活力を生み出しています。しかし、就業規則でががんじがらめに日本人からすると、規律が緩んでいる様な気がしてしまうのです。
出張申請が簡略化されると、必要な時にすぐに出張出来るし、申請書を書く時間や持ち回る時間も節約できて、極めて合理的かつ効率的です。若干申請手続きが緩くても、各部門長は予算には非常にシビアで、出張に使う金額が予算を超えることはありません。各部門長は予算の範囲内であれば、自分の裁量で出張するのは当たり前を思っており、そこを任せられず、あれこれと細かい質問をする上司はマイクロマネジメントのレッテルを貼られてしまいます。

最初は、個人の裁量が大きくて、イライラすることがありましたが、慣れてくるとアメリカ式の方が居心地が良くなっています。日本の会社に元気が無いのは、何もかも規則で縛られ、息苦しくなっているからではと思う程です。
(この文章は、南カリフォルニアの情報誌ライトハウス2104年8月16日号に掲載された記事を修正・加筆したものです。)

Friday, July 31, 2015

明確な目標を設定すると、驚くほど達成に向けて努力するアメリカ人

アメリカ人は、目標を明確にしてあげないと仕事をしにくい様です。



特に年度末になると、「来年の会社の目標は何ですか?」という質問が、直接の部下から寄せられます。
そんな時には、「まあ、会社の目標は、自分一人で決めるよりも、幹部も入れてブレインストーミングをして決めた方が良いだろう。」ということで、目標設定のための幹部会議を設定します。するとそうした会議は、日本人が想定しているものと随分と違ったものになります。

私が経験した相違点を3つ程あげてみます。

第一に、まず議論を開始しようとすると「日本の親会社の目標は何ですか?」という質問が出ることが多いです。
「我々の会社は子会社であり、親会社の目標を達成することが、子会社の使命であるので、親会社の目標が分からないと自分達の目標は設定不可能。」というロジックです。これはもっともなのですが、残念ながら、親会社の上司に問合せると、「目標なんてまだ設定してないよ・・・。」という回答が帰ってくることが多いのが現実です。
たまに、目標が設定されていても、「真のグローバルカンパニーになる。」とか、「笑顔で努力する。」とか、翻訳不可能、説明不可能の目標であることが多いです。日本では自分の会社や部門の目標を設定することにさほど重要性を見出していませんし、ましてや子会社にわかり易く説明しようという意識はまだまだ希薄です。

第二に、目標(Objective)の議論をはじめると、それはObjective ではなく、Missionだとか、いやいやそれは、 visionだとか、 やたらと言葉に定義にこだわる部下が出てきます。
そのうち、Mission, Vision, Value, Objective, Strategy等の言葉の違いをレクチャーしてくれる輩が出てきたりします。しかし、アメリカ人もそれ程これらの違いを明確に理解しているわけではなく、人によって定義は様々です。
どうも、Mission, Vision, Value等が、Objectiveの上位概念で、これらが決まっていないと目標(Objective)が出来ないらしいのです。親会社の目標がないと自分達の目標が立てられないのと同じです。
要するに、アメリカ人は、自分達の目標の上位概念がしっかり決まっていないと目標がたてられない様です。

全社目標は社長がまず骨格を作ることが重要
第三に、会社の目標を決めるのは社長の仕事と思っており、何故、会社の目標を決める会議に自分達が巻き込まれなければならないのか理解出来ないようです。
日本では、各本部の目標は、トップである本部長が独断で決めるのではなく、本部の複数の幹部が集まって合議して決めていました。しかし、アメリカでは、会社の目標(全社目標)は、トップである社長が決めることが期待されています。
全社目標をアメリカ式に社長一人で決めるアメリカ流と、合議制で決める日本流とには、それぞれに長所短所があります。私は、日本のよいところを取り入れて、合議制を定着させようとしました。しかし、その場合でも、アメリカ流のよい所も取り入れて、目標の骨格は私から示す様にしました。

最後に、アメリカ人は、目標を明確に与えると、びっくりする程、その達成に向けて努力します。但し、日本人の様に、目標が無くても、上司の期待を慮って仕事をするのが苦手です。ですから、目標を如何にうまく設定できるかが、成否を左右する鍵と言っても良いでしょう。
アメリカ人は、クリエイティブですし、自分の考えを述べることに日本人程躊躇しません。但し、全社目標の様な大きな話題では、社長のガイダンスや、上位概念の無い中で、自分の考えをのべるのは、さすがのアメリカ人でも躊躇する様です。

ですから、目標設定に際しては、こうしたアメリカ人の心理を理解して、対応することが重要です。

(このブログはカリフォルニアの情報誌ライトハウス2014年8月16日号に掲載された文章を修正加筆したものです。)

Sunday, July 26, 2015

会社主催のホリデーパーティーは、盛大?簡素?どちらが従業員に喜ばれる?

アメリカでは、11月下旬の感謝祭の翌日から、11日までを、ホリデーシーズンと呼びます。この時期、会社では、従業員の一年間の貢献に対する感謝の気持ちを伝えるために、ホリデーパーティーが開催されます。こうしたパーティは、クリスマスパーティと呼ばれていましたが、クリスチャン以外の従業員に対する配慮もあって、最近はホリデーパーティの呼び名が定着した様に感じます。




私が赴任した当時(2004年頃)は、こうしたパーティは、盛大で華やかでした。
平日の夜に、近くのホテルの大きなパーティー会場に、従業員とそのパートナー(一般的には配偶者)を招待。カクテルで1時間程会場の外で談笑した後、着席してフルコースの食事を楽しみます。
その後は、バンドも入って深夜までまでダンス。正装して紳士淑女となった従業員達が、お酒を飲んですっかり陽気なり、普段と違った側面を見せてくれる、アメリカらしい、楽しいイベントでした。
私の会社の事務所は、カリフォルニア以外に、ボストン、テキサス、コロラド等にもありましたので、この時期になると妻と一緒に、これらの場所へも出張したものでした。
しかし、ホリデーパーティーは、次第に簡素化されていきました。
まず、場所が、ホテルのパーティ会場から近くのレストランに変更になりました。しかも、従業員本人だけが出席し、パートナーの出席は認められなくなりました。
まだ、この段階では、夕食会だったのですが、そのうち、これが、昼食会にダウングレード。そして、最近は、会場がレストランではなく、社内のカフェテリアです。料理も出前の極めて質素なものです。従業員へのせめてもの償いとして、当日は、昼食後は、帰宅して良いことにしました。
他の会社に人に聞いても、最近、ホリデーパーティは質素になりつつある様です。多くの人は、きっかけはリーマンショックにあったといいます。それをきっかけに、経費削減のためホリデーパーティを簡素化しましたが、それがそのまま定着してしまったらしいのです。

パーティーで従業員と仲良くしすぎるのはNG
簡素化が定着した理由には幾つかの説があります。
第一に、米国人は会社のために多くの時間を割くことを好まず、もともと、会社主催のホリデーパーティを止めたがっていたという説。
第二に、最近アルコールに対する取締りが厳しいので、会社の行事でアルコールを出すことに、会社側が慎重になり始めたという説。
まあ、どちらも一理あると思います。ただ、日本人の私は、イベントが簡素化されて、少しほっとした部分もありました。それは、ホリデーパーティで、従業員の夫婦同士の付き合いが始まると、その従業員を解雇せねばならない事態に直面した時に、冷静な判断をしようとしても、躊躇してしまうからです。そんな訳で、こうしたパーティを通して、従業員と家族単位での付き合いをあまり深めてしまと、解雇に慣れていない日本人は居心地が悪くなってしまう場合もあります。
アメリカ人が会社主催のホリデーパーティが好きなのか、嫌いなのかは、10年たった今でも良く分かりません。まあ、日本でも宴会好きの人もいれば、宴会嫌いの人もいる様に、人それぞれなのでしょう。
但し、良くも悪くも、ホリデーパーティは、アメリカ人にとって、かなり関心が高いイベントであることは確かです。
幹部会議で、ホリデーパーティーを議題に取り上げると、普段寡黙な幹部も議論に参加し、喧々諤々の白熱した議論になります。また、かなり多くの従業員が、何年も前のホリデーパーティの写真を、自分の机の上に大切に飾っていたりします。
ホリデーパーティをどうハンドルするかによって、社長の評判も変わってきますので要注意です。

(この記事は、カリフォルニアの情報誌LIGHTHOUSE 2014年8月16日号に掲載された記事を修正加筆したものです。)

Saturday, April 18, 2015

アメリカで従業員を解雇するとき気を付けるべきこと

米国で仕事をしていて、一番、嫌なのは、解雇です。私は、米国着任後、私が日本にいた時から、自分の片腕としてよく働いてくれた米国人幹部を解雇せねばならない状況に陥りました。
彼は、私の事務所から数千キロ離れた工場に勤務していました。解雇通知を電話でするのはまずいので、ある課題について、彼の意見を聞きたいので、私の事務所に来て欲しいと言って、彼を呼び出しました。彼は、張り切って、私のために、プレゼンテーション資料を準備しました。
解雇当日の対応について、私は何回も人事部長に相談に行きました。解雇の際に言い渡す文言については、人事部長に事前に原稿を作ってもらいました。当日に向けて、何回もその原稿を読み、私なりの修正を加えて、頭に入れ、緊張しながら当日を待ちました。
解雇当日、彼は飛行機を乗り継いでやってきました。彼が私のオフィスに入り、私のために一生懸命準備したプレゼンテーション資料を開いた瞬間、私は暗記していたフレーズを言い渡しました。私はどうなることかと心配していましたが、彼は以外にもあっさりとしていて、「そうですか。分かりました。これまで有難うございました。」と言って、私のオフィスを出て行きました。それ以降、彼とは、一度も会っていません。
彼の冷静な態度について、人事部長に話したら、「彼はプロフェッショナルだね。」と褒めていたのを今でも思い出します。
それから何回も解雇の場面に遭遇しました。そして、米国社会は、解雇があるが故に、日本社会と異なる側面があることが、分かってきました。


日本と米国の解雇における解雇の際に見える違い
第一に、会社での人間関係です。
米国には、"be friendly but not a friend" 「フレンドリーであれ、でも、友達になるな。」というフレーズがあります。会社の中では、人間関係を円滑にするために、フレンドリーでなければならないが、解雇したり、解雇されたりするかもしれないので、友達にはなるなということだそうです。 
日本では、上司と部下が、家族ぐるみで付き合ったりして、緊密な人間関係を築こうとしますが、米国ではそれ程緊密な関係にはなりません。また、自宅に招待することは、良くないという話を聞いたこともあります。解雇された部下が、腹いせに自宅に放火したりする可能性があるからということです。
それまでとてもフレンドリーだった部下が、会社を辞めると2度とコンタクトして来ないということが度々あり、人間関係の希薄さに寂しい思いをしたことが再三ありました。
第二に、上司との関係。
上司への絶対的服従は、日本人以上です。上司に睨まれると、解雇されるという恐怖がありますから、とにかく上司には徹底的にゴマをすり、上司からの指示はそのまま受け入れます。合理性を追求する米国人もここでは、冷静さを欠きます。
第三に、リストラの噂が流れた時の対応。
少しでもリストラの噂が流れると、何とか解雇を免れようとするのか、沢山の従業員が様々な形でコンタクトを取ってきます。多くの場合は、解雇された場合の割増金の交渉です。
会社側も、リストラ前には、従業員への発信を減らしたりと、少し妙な行動を取ることが多いので、従業員もリストラがありそうなことに気づいてしまうのでしょう。
面白いのは、解雇した従業員が、何年かして、再び採用されることがあることです。採用された当日、挨拶に来た従業員に「どこかで会ったことがありますよね。」と言うと、「貴方に2年前に解雇されました。」という返事が、明るくい返ってきて、びっくりすることがあります。

とにかく、日本人である私は、この解雇という習慣に慣れることはありませんでした。従って、特に人事部長と法務部長は、信頼出来る人を雇うことが重要です。慣れないこと、そして最も難しいことをやる時に、彼らからの、親身になった、そして、公平な観点からのアドバイスは本当に有難いです。

(この記事はロサンゼルスのコミュニティー誌である「ライトハウス」2014年8月16日号に掲載された記事を修正・加筆したものです。)

Sunday, April 12, 2015

アメリカで従業員の一年間の評価を上手に行うための秘策とは?

前回までは、経営品質管理の最初の3つのフェーズ、つまり、目標を設定し、それを従業員に伝達し、それを実行するところまでお話しました。今回は、最後のフェーズであるフィードバックについてお話します。

部下と共に年初に設定した目標を、一年間、部下と共に実行した後には、部下へのフィードバックが待っています。
米国ではこのフィードバックのプロセスをPerformance Appraisalといいます。日本でいう、成果評価です。私は、このプロセスが非常に苦手です。日本人は全般的に苦手なのではないでしょうか?あまり、ものをはっきりと言わない日本人にとって、部下の前で、部下のことをどう思っているかを言うのは、余り居心地の良いものではありません。
私の会社では、4月下旬から5月位に、各従業員の前年度の評価と今年度の目標の設定を行います。
Performance Appraisalの際に、作成するフォーマットは、短くしたり、長くしたり、定性的な評価項目と定量的な評価項目のバランスを変えたり、何回も改良を加えましたが、基本的な部分はあまり変わっていません。要は、その部門が目標を達成出来たのか否かを振り返り、その人が目標達成に貢献した点(良かった点)とその人が更に改善すべき点(悪かった点)を具体的に記述し、悪かった点についてどの様に改善すれば良いかアドバイスを記載し、次年度の目標に反映させます。
日本でも、米国のマネをして、目標管理制度が導入されてから20年以上になると思いますが、正直なところ、幹部も一般従業員もあまりこの制度を重要視している様には見えません。いまだに、日本では、終身雇用、年功序列が一般的で、目標の評価が良くても、悪くても、自分のキャリアパスや給与にそれ程大きな影響がないからでしょう。
目標評価のシートに空欄があっても、面接の時間が短くても、極端な話、面接をしなくても、部下から文句を言われたことはありません。


アメリカ人の従業員に自己評価をさせてみる。
しかし、終身雇用や年功序列の無い、アメリカでは、この点は大きく異なります。会社を移動することによって、ステップアップしていく、アメリカ人はにとっては、Performance Appraisalに何が記載されているかは非常に重要です。ここに良いことが記入されていると、次の会社に自分を高く売り込めますし、逆に、悪いことが記入されていると、自分の市場での価値が下がってしまいます。
極端な話、アメリカ人は、Performance Appraisalのために一年間働いていると言えますし、上司の最も重要な仕事は、Performance Appraisalの記入だと思っている節があります。
アメリカ人と、日本人の間の、こうしたギャップを埋めるためのやり方として、一つお勧めしたいのは、自己評価です。アメリカ人に自己評価をする様に指示すると、自分の良かった点、悪かった点を、非常に詳細に記載してきます。
例えば、Mikeという部下に自己評価をお願いすると、「Mikeは、顧客を常に大切にしている。彼の献身的な仕事振りが、会社の業績向上に、大きく貢献した。」等と、日本人ではありえない程、自分を持ち上げた文章を書いてきます。これを少し、修正してやれば、目標評価の完成です。
自分の評価について、これだけ大胆なことが書けるアメリカ人だから、自分の評価について、上司と話し合う時に、日本人の様な居心地の悪さを感じないのかというと、そうでもありません。
評価フィードバックの面接では、部下も緊張しているのが分かります。

アメリカではフィードバックは避けられないプロセスですし、アメリカ人にとって重要なプロセスです。一方、日本人は他人を評価することを嫌がりますし、そもそもフィードバックに時間を使うのは無駄だと思っています。従って、自己評価に遠慮しないアメリカ人の性癖を利用して、まず自己評価をさせ、効率的にフィードバックするのが、うまいやり方だと思います。

(この文章は、ロサンゼルスのコミュニティ誌「ライトハウス」2014年8月16日号に掲載された記事を修正・加筆したものです。)